日本酒「飲用温度」の呼称（表現）

日本酒をいつもご紹介しているブログとして頑張っていますが、先日知人から

『飲み方のオススメとして「冷」しか勧めて書いてないけど、何度くらいの「冷」かが不明なんですけど』

というお話をされたのを受け、日本酒「飲用温度」についてちゃんとまとめてみました。

ちなみに私がブログでオススメしている「冷」というのは、呼称としては「花冷え」くらいの温度での飲み方でございます。

※ただし、全国共通の統一された呼び方ではないと思いますので、ご了承ください。Wikipedia等、もっと詳しい詳細を書いた文献があると思います。

日本酒は温度表記としては「熱燗」「冷や」「冷酒」の３つに大きく分類されます。ここではその温度表記毎の特徴と個人的見解について解説していきます。

「飲用温度」の呼称（表現）

【飛切燗（とびきりかん）】🔥🔥🔥🔥🔥

温度：５５℃以上

日本酒の「燗」の中では、最上級の熱い呼称です。徳利を持つとかなり熱いレベルです。シャープな香りになり、最も辛口となります。

燗にすると、どの日本酒も基本的に味わいが大きく変化します。辛くなるとも言われておりますが、様々な日本酒で「冷」「燗」で飲み比べをしてみると、甘くなるものもあります。

この「辛口」「甘口」というのも個人差がかなりあり、日本酒度で表記されている辛口を飲んでも、甘いという方もおられますし、甘口を飲んで辛いという方もおられます。

私のお店でも日本酒を「燗」でオーダーされ、冬場ですと「ホットコーヒー並みに熱くしてくれ」という注文を受けた事もあります。

ここまで熱くすると、全体的な味わいのバランスが総崩れして、アルコールが物凄く飛んでしまうので、全くオススメ出来ない飲み方です。

ちなみにアルコールは７８℃を超えると蒸発していきます。

本醸造酒では特にオススメの温度です。

【熱燗（あつかん）】🔥🔥🔥🔥

温度：５０℃くらい

所謂、居酒屋で提供されている「熱燗」の温度。ちゃんと日本酒というものを理解してご提供しているお店に関しましては、この温度でご提供しているものと思われます。

とてもキレが良い辛口で、香りもキリっとしてきます。

ただし、お店によっては「上燗」や「飛び切り燗」でご提供される場所も多数お見受けしております。※レンジを使用して温めている場合「飛び切り燗」が多いのかなと思います。

個人的に「冷酒」でしかオーダーしないので「燗」では頼みませんが、以前「燗」でオーダーした際、おしぼりで徳利をつまんで提供されたお店もあり、とりあえず徳利自体持てませんでした（笑）

居酒屋や小料理屋さんで「燗」でオーダーする際は【呼称】で伝えるのが一番良いとされています。本醸造酒・普通酒でオススメの温度です。

【上燗（じょうかん）】 🔥🔥🔥

温度：４５℃くらい

「熱燗」より少々ぬるいくらいの「上燗」。御猪口に注いだ際、湯気が出る程度くらいです。「熱燗」とほぼ変わりはないと思います。

香り・味わい共にグッと引き締まります。

小料理屋さんで「酒タンポ」等で湯煎で温めて「燗」にして提供しているお店を見ると「燗」を飲みたくなってきたりします。

生酛系でオススメの温度です。

【ぬる燗（ぬるかん）】🛀

温度：４０℃くらい

コク・甘味共にどんどん増して、香りがとても良く、冷酒よりもまろやかになります。徳利自体が熱くはない程度です。ふくらみが生まれて来ますので、特に「純米酒」にはオススメです。

特に居酒屋での「１人酒」がお好きで、且つ日本酒がお好きな方は「ぬる燗」を注文する方が多いそうです。小料理屋・居酒屋に入り「ぬる燗」で注文した後、そのお店の突き出しと一緒にチビチビと寡黙に無言で呑む。酒の肴とご一緒に嗜んでいる様は、とてつもなくかっこいいです。

ここで、別に店主に話しかけるわけでもなく、黙って呑むのが通。この行動をすると、日本酒にどんどんのめり込んでいく事と思います。是非試してみてください。

山廃系ではオススメの温度です。

【人肌燗（ひとはだかん）】🙏

温度：３５℃くらい

まさに「人肌」といった温度。徳利自体は若干温かいと思うくらい。味にふくらみがあり、米と麹の良い香りが立ってくる。

個人的には、３０℃～４０℃のお燗はあまり好んではいただきません。基本的にどこのお店でも「冷酒」で頂いているため、寒い時期に極稀にお燗をオーダーする際であれば「熱燗」や「飛び切り燗」で嗜んでおります。

「ぬる燗」「人肌燗」「日向燗」は香りも立ちやすく、美味しく飲めるものもありますが、温度でいうシャキっと冷たい冷酒か、じんわりと温かく体に染み入る熱燗かがすごく味わいがわかりやすいです。※個人的にです

純米酒でオススメの温度です。

【日向燗（ひなたかん）】🌞

温度：３０℃くらい

「冷や（常温）」よりも少々高めな温度。基本「冷や（常温）」で日本酒を嗜んでいる方で、もう少し香りが欲しいかなーという方にオススメです。

「冷酒」の部類でずっといただいていると、たまに「日向燗」でいただくと、香りの違いが明確にわかります。「燗」という呼称の中では、一番下の「日向燗」ですが、その銘柄を、まず香りで楽しみたい。という際に「日向燗」で楽しんだりしています。

人肌燗と同じ純米酒でオススメの温度です。 

【冷や（ひや）】🍶

温度：常温

この「冷や」が日本酒の基準温度。お燗により温度を上げる事により、”酸味”が下っていきます。これに比例して”旨味”が上がっていきます。

「熱燗」にすればするほど、コクや深い味わい、辛さが増します。分類ですと「生酛系」「純米系」を「熱燗」にする事で、味の変化の幅が大きいです。こういうお酒を『燗映え（かんばえ）』すると言います。

燗にした際、温かさが日本酒全域に均等にムラなく行き渡り、その日本酒の良さが上手く引き出された事を『燗上がり（かんあがり）』すると言います。これは、徳利に入れて湯煎して燗にする事で、上手に燗上がりさせる事が出来ます。

この一度燗上がりさせた日本酒が再び冷えてしまった状態の事を『燗冷まし（かんざまし）』になると言います。

燗冷ましになってしまうと、味わいが多少落ちる気がします。全体的なバランスが崩れて、上立香としは強いアル添感が出てきます。この状態を『燗崩れ（かんくずれ）』と言います。

「冷や」からの温度変化としては、５℃ずつ味が変化していきます。

※私は、５℃ずつでは詳しく変化がわかりません（笑）

ただ、あからさまに「熱燗」と「冷酒」ではホントに全くと言っていいほどの味の違いがあるので、味わい・香り共に、一つの銘柄で楽しむ事が出来ます。

純米酒でオススメの温度です。

個人的にやはり「冷酒」の部類がオススメですので、ここから記載していきます。

【涼冷え（すずひえ）】❄

温度：１５℃くらい

常温に一番近く、ぬるくはありませんが、キリっと冷たいわけでもありません。喉で味わう事はせず、口に含んで泳がせて味わいを感じるのが良いくらいだと思います。

冒頭で記載いたしました、個人的に「花冷え」でオススメしているというのも、１０℃以下くらいからひんやりとした味わいが感じられるので、実質飲んでいて美味しいと思えるのがそのぐらいだからです。

確かに「日向燗」くらいから香りは増してきます。「熱燗」「飛び切り燗」まで燗にすると、辛くも感じられます。辛口の方が和食には合うと思いますが、５０℃くらいの日本酒と和食はどうしても、個人的には好めず。

冷たい「花冷え」くらいの日本酒と”お造り”。最高です！”焼鳥”や”焼き魚”、”ぬた”、”香の物”などが酒の肴として横にあると、キリっとした日本酒に良く合います。

お燗にする事の一番最大の特徴は、お料理の”生臭さ”を抑制する働きが強い事です。主に鮮魚などの生臭さを熱燗で消す事が出来ます。これは和食だけには留まりません。

食中酒として最適な日本酒の場合、和食以外にも、幅広い一般のお料理の中で、生臭いかなーと思うものの臭気を抑制する事が出来ます。吟醸酒でオススメの温度です。

「涼冷え」よりもオススメな「花冷え」も詳しくご説明致します。

【花冷え（はなひえ）】❄❄

温度：１０℃くらい

個人的に一番好きな温度がこの「花冷え」だと思います。鮮魚、お肉、お野菜、漬物等、全般に合います。特に「和食」には最適で美味しいです。「日向燗」や「ぬる燗」、「冷や」くらいがちょうど良いという方も多いですが、あくまでみんな個人的な口の好みでお好きな温度でいただけるのが日本酒の良い所です。

この「花冷え」にもデメリットがありまして、中華料理系統の濃い味系、香りが強い系といったものだと余り適さない飲用温度かと思います。

私が夏季・冬季問わずいただいている「花冷え」のご紹介でした。

生酒や原酒などで特にオススメの温度です。

さらにもっと冷たくしていきます。「雪冷え」のご説明。

【雪冷え（ゆきひえ）】❄❄❄

温度：５℃くらい

物凄い冷たいです。口に含むと、キリっしたシャープな感じはしますが、「日向燗」くらいのものと比べると、香りが断然違います。

純米大吟醸で甘口の日本酒を、最初の一杯としてはオススメです。ここまで冷たいと常温冷やの日本酒を頂いている途中に挟んでも面白いと思います。

「雪冷え」「花冷え」にも言える事ですが、自分で注いだとしても、お店でご提供されたとしても、話が弾んでしまって、そのまま飲まずに置いておく事だけはお控えください。どんどんぬるくなりますし、その低温状態の香りの高さや、口に含んだ際の味の変化を愉しめなくなります。

こちらも生酒や原酒がオススメの温度です。

さらにさらに。これより超低温の段階も存在します。

【霙酒（みぞれざけ）】🍨

温度：０℃～－１０℃くらい

こちらに関しては、提供しているお店をあまり見かけた事がないです。

ただし、誰でも簡単に【霙酒】を作る事は可能です。

霙酒作成手順

１．まず冷蔵庫で日本酒をキンキンに冷やしていきます。日本酒は缶に入ったものか、温度の伝導率が高い鉄製のものに移し替えて冷やすと良いです。

２．完全に冷えましたら、冷凍庫に入れて９０分冷却致します（冷凍庫の設定温度によって冷凍する時間は異なりますので、ご自分で見ながら調整してみてください）。この際、いただくグラスも冷凍庫で冷却します。

３．冷凍庫からなるべく振動を与えずに静かに取り出して、同じく冷凍庫で冷却していたグラスに、やや高い位置から注ぎます。

これは、高い位置から注ぐ事により、過冷却が成功していれば、日本酒がグラスに注がれた衝撃で、グラスの注がれた日本酒が瞬間冷却されてシャリシャリとした形状になるという事です。

以上が、霙酒の作成手順です。是非試してみてください。

フラッペの様なシャリシャリ～トロトロ〰というソフローズン状に変化しますので、デザイン性・映え方はトップクラスで美しくフォトジェニック抜群です。ＳＮＳには強烈に持って来いの画だと思います。

「霙」というだけあり、グラスの中は「真冬の凛とした雪景色」を彷彿とさせる、真っ白な透き通ったクリアな状態です。

口に含むと、シャリシャリではなく、台湾かき氷の様にふわ～っと溶けて、そこから味わい・香り共に、口内全体にじんわ～り広がっていきます。

さらにオススメとしては、霙酒に果実酒を極少量入れたりしても面白いです。味の変化が著しく変わります。

⚠作り方の注意点としては、日本酒というものは、－７℃くらいから氷結していきますので、ゆっくり冷却しないと一気に凍結してしまいますので、上手く過冷却をさせるには多少難しいかもしれません。

～日本酒「飲用温度」のまとめ～

日本酒の魅力の一つにあげられるのが、飲む温度を変化させて味わいを愉しむといった事が出来る事です。

日本酒の甘口好き。辛口好き。冷酒好き。熱燗好き。個人個人のお好きな飲み方を見つけて楽しく飲みましょう🍶

日本酒だけでなく、お酒を飲むと気持ちも高揚してきて、楽しくなってきます。会話一つとっても、気も強くなってくるので、重要なシーンでの発言には充分注意してください（笑）

※お酒は２０歳からです🍺